俺が魔王国へ来てから、三日がたった、今日は会談の日だ。

「ソエル殿、お迎えに上がりました」
「ゾイズじゃあないか、わざわざ迎えに来るとは、どういう心境の変化だ?」

大方、俺に少しでも好印象を与え、兵士になるように促すためだろうが……

「少々事情が変わりました、ソエル殿には、これから現魔王国の王イザベラ様と面会して頂きます」

ソエルは少し驚いた反応を示したが、その後すぐに、ニヤッと笑みを見せた。

「別に構わないが、内容の変更とかはないんだよな」
「内容の変更はございません、会うお方が、将軍から、王に変ったとお考え下さい」

そう言うと、ゾイズは用意した馬車に俺を乗せ、魔王城へと向かった。


・・・・・

[魔王城]

先代魔王が建てた最初の城、王族が住んでいることもあり、警備兵は軍の中でもトップクラスの者が採用されている、また、侵入者対策として多くのトラップが張られており、魔王国軍の諜報部隊ですから、王間にたどり着く事は出来ないそうだ。

「ソエル殿、こちらが王間でございます」
(ちょっと待って、俺は礼儀や作法とかは知らないのだが、大丈夫か?)
(なに、ソエル殿の事は事前にイザベラ様に伝えております、問題ないでしょう)
(分かった、俺も可能な限りの対応はするつもりだ)
「(お願いします、では、)失礼します」

王間の中は広く、いかにもRPGに出てくるようなラスボスの間と言う感じだった、そこの真ん中には、黒色の魔道師服に赤いラインが入った服を着た、角の生えた美少女が座っていた、一見ただの少女に見えるが、その魔力量はデュラン並であり、ソエルはこの少女がイザベラであるとすぐに気付いた。

「イザベラ様、こちらの方がソエル殿です」
「初めまして、ソエルと申します」
「おお、主がソエルか、なに、楽にするがよい、話はゾイズから聞いておるぞ、なんでもゲルトとゾイズを無傷で無力化したらいしな、報告を聞いた時は目を疑ったが……会ってその理由も分かった、お主相当の魔力を宿しておるな」
「魔王様こそ、俺なんか一捻りに出来そうな膨大な魔力を感じるな」

お互いにある程度打ち解けた後、イザベラの命でゾイズは部屋を出て行き、契約の話へと移った。

「では、ソエルよ、貴様は魔王国軍代13部隊の隊長となり、給料は月25金貨、特権として宿代免除と城への出入自由化といった所でどじゃあ?」
「確かに、悪い話ではないな、俺がただのバカならば、この話をのんでいただろう、俺を試しているのか?」
「た、試すも何もお主が何を出来るのか分からない状態では、これ以上の条件は出せんな」

なるほど、正論だ、俺が魔力を隠しているのも見抜いているようだしな、ここは魔王に免じて、三割ほど魔力を解放して、ついでにスキルも見せてやろう

「分かりました、では、少し魔力を解放します」

俺が魔力を解放すると、イザベラは冷や汗をかいていた、おいおい、まだ、二割程度しか、解放してないのだが……

「あの……」
「な、なんじゃ、お、終わったか?」
「い、いえ、まだ二割程度……」
「二割!?」

……まさか、この魔王、バカ正直に常に魔力を完全解放しているのか!?、大丈夫かよこの国……、まぁ、俺も昨日今日で覚えた技術だから、人の事は言えないが……

「ソエル、お前の実力はよぉ~く分かった、怒っているなら謝る、だから、命だけは、命だけは……」
「いやいや、俺は別に争いに来たわけじゃ無い!お前に仕えに来たんだよ………条件次第だけどな」

魔王は半泣きに成りながら「へ?」と言う声を出した、どんだけ俺が恐ろしいんだよ、幸いこの部屋の音は外には漏れないようになっているようだ、そうでなければ、ゾイズが飛び込んで来るだろうしな

「……すまない、少し取り乱してしまったようじゃ、では、そちらの希望を聞こうか」
「まずは、給料はそのままでいい、だが、特権を追加してほしい、この城の本と武器の保管庫を見る権利をくれ、もちろん持ち出しや、中の物に関する情報を誰にも話したりはしない」
「ふむ、まぁ、そう言うことならば、分かった、その権利をお前にやろう」
「後一つ、役職についてなんだが、『黒騎士』のにしてくれないか?」
「貴様……、本気で言っているのか?すまないが実績の無いものを黒騎士には出来ない、そういう先代魔王から続く決まりじゃからな」

やはり断られたか、まぁ、想定の範囲内だから、対策もちゃんとしてるけどね

「実績ていうのは、別に戦争限定とかじゃなくてもいいのか?」
「そうじゃなぁ、革命的な物ならば、なんでもよいぞ、出来れば物騒な物以外がいいが……」
「じゃあ、ちょっと待ってろ」

俺はこの三日間遊んでいたわけではない、この国の事について色々と調べていたんだ、そして気付いたのだ、そう、この世界にはアイスクリームが無いことを………、俺はスキル《創造者》を使いアイスクリームを産み出した。

「貴様、それは創造魔法か!?そんな魔法を儀式も使わず使用するとは……」
「そんなことよりも、革命的な食べ物を産み出してやったぞ」
「ほぉ、では早速食べて見ようか」

イザベラはヨダレを垂らしながら、アイスクリームにかぶりついた。

「冷たっ、じゃが、すごく甘くて美味しい!?」
「俺を黒騎士にしてくれたら、この食べ物の作り方とそれとは少し違うが同じ様な食べ物を産み出してやる」
「よし、分かったのじゃあ、今日より貴様を黒騎士と任命する、そして………」

そう言って魔王は少し黙っり、口を開いてこう言った。

「黒騎士よ、今日からお前は余の物だ!」
「了解しました、魔王様、何なりとお申し付け下さい」
「では早速、黒騎士よ、アイスクリームのおかわりを出せ、命令じゃあ」

そう言って魔王を俺の出したアイスクリームを食べ続けた、この後、魔王が腹を壊したのは言うまでもない。