ぽかんと口を開けていると美形さんが苛立った声を発する

「お前、そこは俺の席だ」

「……は?」

何コイツ

すっげぇ偉そう

つうかめっちゃ威圧的だし

「ここがアンタの席?」

偉そうに言ってんじゃねぇよ

一瞬でも見とれちまったオレがバカみてぇ

「オレが先に座ってたんだぜ?
そんなに座りてぇなら『お願いします、その席を譲ってくださいお願いします』って頭下げんのが道理だろ、え?」

『オレが』のところを強く言う

すると、野次馬達が息をのんだ

「あの方何を……」

「逆らうなんて……」

「あり得ない……」

こっそり話しているつもりなのだろうが、バッチリ聞こえている。

野次馬共(そいつら)の反応を見た限りじゃコイツ、相当身分が高い

……でもよ

身分が高いのと、自分のワガママを何でも通していいってのは違うだろ

オレが住んでたとこなら五歳児でも知ってることだぞ?

「俺が誰だかわかって言っているのか!」

「知るわけねぇだろ
オレにはアンタがあんまりにもひでぇ教育受けてきたっつうことしかわかんねぇよ
くそガキ」

「なっ……」

金魚のごとく口をパクパクと動かすその美形男

ほれみろ

言い返せねぇじゃん

男の額に青筋がうく

「まあオレは優しいからな
譲ってやるよ
ガキのためにすんのが年上の役目だかんな」

席を立とうとする……が

「待て!」

……何なんだよ、この男