「ここに行ってもらえないかしら」

母さんに呼び出されたオレが渡されたのは『ヴィンストン王立学院』と大きく書かれた紙

その下には何やら細かい文字がびっしり

けれどその紙をしっかり見ることなくオレは答えた

「絶対行かない」

ヴィンストン王立学院は国王が設立した超難関校だ

しかし貴族の端くれとはいえ田舎者であるオレがヴィンストン王立学院を知っていたのには別の理由があった

ヴィンストン王立学院は国で唯一の男女共学校なのだ

そしてその紙に何が書かれているかは想像できる

オレの黒髪を流れる冷や汗がそれを表していた

「なぜ?」

母さん……

にっこりと笑っているように見える母さんの表情

……しかし

(目が全く笑ってないよ)

「母さんが……お母様がそこに入れっつってんのは……おっしゃってんのはオレ……わたくしを女らしくしたいからだろ?」

たどたどしいお嬢様言葉で応戦

「ええ
身内以外の男性の目があれば少しは女らしくするでしょう?」

他にもありそうな気もするけどな

母さんの言葉の裏に『目指せ玉の輿』の文字が見える

「でもだったらこんなとこ入らなくても友達のマネすればいいじゃんか」

「わたくしもそう思っていたのだけれど……」

「だけれど?」

「この三年間で少しでもあなたが女らしくなって?」

三年前からサデル女学院に通いはじめ女友達はできた

できたんだけど……

その子たちを変な奴らから助けたりしてるうちに男っぽさに磨きがかかったっつうか……

今じゃオレ、その辺のチンピラどもより強いもんね

『男らしくなりました』とは答えらんないよなぁ

無言で首を横に振る

「だったら入るわよね?」

「……けどさオレ男がいたって態度は同じだよ?
ヴィンストン王立学院には入っても入らなくても変わんないじゃん」

不満そうに唇をとがらせれば、母さんがニコリと嫌な笑みを浮かべて口を開いた