「…こいつらに金を渡したのは男。それに狙ってるのは私…誰なんだ?」
私は素早く(実は)陰で控えていた暗部隊に指示を出してカロット様の屋敷に戻った。
茂みを出ると
「ユラ!!」
「…陛下?」
私に気付いた陛下がパタパタと走ってギュッと抱き締めてきた。
「…陛下…、どうしました…っ」
「ユラ、大丈夫!?怪我は!?もう…姿がないから心配した。…お願いだから私の知らない内にいなくなるのはやめて…」
“私の知らない内に私の前からいなくなるのだけはやめてくれ…”
「……っ…」
昔の言葉を思い出して私は息を呑んだ。
…そっか…
「…お側を離れてしまい申し訳ありません、陛下。私はここにいます。貴方の側から勝手にいなくなる事はありませんから。」
すると一瞬腕の力が強くなってスッと陛下の身体が離れた。
その時見た陛下の表情は悲しそうな、泣きそうな表情だった。
それを見ていた事情を知っているライとチェスは優しい目で2人を見守っていて、事情を知らないカルナはこの光景に驚きを隠せない様子だった。


