そう思ったときには、私の唇に竹ちゃんの唇が触れていた。

「たけちゃ……」

 名前を呼ぼうとしたら、唇を強く押し当てられた。仰け反ろうとしても後頭部が壁に当たっていて、身動き一つ取れない。

 やだ。エイプリルフールのキスなんてやだよ。私、竹ちゃんのこと、同期以上に想ってるのに……!

 もう一度名前を呼ぼうと唇を開いたら、竹ちゃんの舌が滑り込んできた。歯列をなぞられ……口の中をまさぐられて……まるで本気みたいなキス。体が熱くなって……本気で溺れてしまいそう。

 でも、竹ちゃんのことだから、いつもみたいに私をからかってるんだ。梅だってたまには竹に反撃するんだぞ!

 竹ちゃんの唇が離れた。少し潤んだような目をしている竹ちゃん。その彼に言ってやる。

「ここには防犯カメラがあるんだよ!」
「えっ」

 竹ちゃんがぎょっとして振り向いた。その隙に私は彼の腕の間から抜け出し、ソファから立ち上がって竹ちゃんを見下ろす。

「嘘だよ、バァカ」
「なっ!」

 竹ちゃんが勢いよく立ち上がった。私より二十センチくらい高い位置から私をキッと見下ろす。