【短】かわいい桃くんの甘い癖





ひとつひとつの机にプリントを置いていく作業を終えたあたしたちは、次の作業に取り掛かる。


次の作業……それは、数枚のプリントをホチキスで止めていくというもの。

机に置いていったプリントは実は3枚あって、それをホチキスで一つに止めてほしいと先生に頼まれたのだ。


こんな細かい作業は、先生が先にやっておいて欲しかったよ。



「なあ、姫宮」


「何?」



静かな視聴覚室に、王泉くんの聞きやすい低い声が響く。

あたしはホチキスでプリントを止めながら、視線だけを王泉くんへと移した。



「姫宮ってさ……あいつとはどういう関係なの?」


「あいつ?」


「あいつだよ。いつも昼休みになると来る後輩」


「あぁ、桃くんのこと?」



どうして王泉くんが桃くんのことを聞くんだろう。

……でもそのことは聞けなかった。


王泉くんがあまりに真面目な目つきであたしを見てくるから。



「どういう関係?」


「どういうって……、普通の幼なじみだよ」


「幼なじみ?」


「うん。ただそれだけ」



自分で言っていて悲しくなるけど、本当にそれだけ。

あたしはもう一つ先の関係へと進みたいけど、……今は幼なじみ。