「でも昼休みに用事があるなら、桃くんとのあま~い時間は、今日は見れないわけね」
残念、と呟いた充希に、あたしは「甘くないし」と言い返す。
でも、確かに昼休みは先生の雑用で潰れてしまうと思うから、桃くんと過ごす昼休みは今日は無いってことになる。
………ちょっとショック。
「甘いでしょ、あれは。だって抱きつかれてるんだよ?」
「……けどさ」
「けど?」
「あっちにはどうせ、甘い気持ちなんてないと思うよ」
目を伏せながら言ったあたしの言葉に、充希は何も言わなかった。
充希にだけ教えている、あたしの隠している想い。
それは、ずっと前から抱えているある感情。
桃くんに対しての、特別な気持ち。
――キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴り響いた。
朝のHRが始まる。
席に着いて、先生の話を聞き流しながら、桃くんのことを考えていた。
いつからこの気持ちが生まれたのかは、わからない。
気づいたときには心にあった。
桃くんのことを、あたしはずっと前から想っている。
それは幼なじみとしてでも、人としてでもない。
ひとりの男子として、桃くんのことが――好きなんだ。
それに気づいたのは、中学を卒業したときだ。



