「雪ちゃーん!」
今日も、後ろから聞こえてくるこの声。
あたしが家を出ようとしたその瞬間に、その声と同時に感じる肩の重み。
「おはよっ」
天使のような笑顔で挨拶をしたのは、あたしの首に腕を回して、あたしのことを後ろから抱きしめている幼なじみの小原 桃【コハラ モモ】。
その可愛らしく整った顔立ちと、あたしよりも少しだけ高い身長、そして誰もが魅了される天使のスマイル。
それらが有名となり、あたしの通う高校では、桃くんはすごく人気なのだ。
「おはよう、桃くん」
あたしのひとつ下である桃くんは、いわゆる後輩。
だけど、物心着く前から一緒だから、敬語とかは遣われていない。
というか、家が隣だし。
親同士も仲いいし。
あたしたちの間には、先輩後輩や幼なじみなんて言葉には入りきらない関係があると思う。
「ふふっ、可愛いなぁ」
「何が?」
「ほっぺ、赤いよ」
「っ!」
あたしはどうやら赤面症らしく、毎日桃くんに抱きしめられる度に顔を赤くしている。
桃くんには、抱きつき癖がある。
それも、あたし限定の。