「もう二度と、雪ちゃんのこといじめないでね」


「こ、小原くん!わ、私たちは……っ!」


「もしいじめたら、僕、君たちに何するかわからないよ」



こんなに低い桃くんの声、初めて聞いた。

後輩女子を睨む桃くんに、彼女たちは顔を青くしていく。


後輩女子三人は、悔しそうな顔をしながら視聴覚室を出て行った。




「桃くん、どうしてここに……?」


「親本さんに聞いた」



あたしの肩に顔をうずめながら言う桃くん。

桃くんの栗色のふわふわな髪が首元に触れて、ちょっとくすぐったい。

……桃くん?



「……ごめんね、雪ちゃん」


「え?」



どうして謝るの?

桃くんは何もしていないのに。ううん、何もしていないどころか、あたしを助けてくれたのに。



「僕のせいでこんな目に遭わせて」


「桃くんのせいじゃ……!」


「ううん、僕のせいなんだ」



桃くんは顔をあたしに見せないまま、話を続けた。



「実は、体育祭の時の練習で僕がみんなの前で雪ちゃんに抱きついたせいで、雪ちゃんが女子に目をつけられていることに気づいてたんだ」