【短】かわいい桃くんの甘い癖




サラッ…とあたしのボブの黒髪が揺れる。


なんだろう、この雰囲気。

少し、苦しい。



「どうしてって……わかんない?」


「わ、わかんないよ」



あたしがオロオロしながら言うと、王泉くんは「そっか」と呟いて、クシャッと前髪をかきあげた。

困ったように微笑みながら、王泉くんはあたしから視線を逸らさない。


「結構、アピールしてきたつもりだったのにな」


そう呟いた王泉くんの言葉は、あたしのところまで届きはしなかった。

あたしが聞き返すと、王泉くんはただ微笑んだ。



やっぱり、桃くんの笑顔とは違う。

王泉くんと桃くんは……違う。



「姫宮 雪【ヒメミヤ ユキ】さん」


「は、はい」


「俺の彼女になってください」



……え?

思考が止まりそうになった。


いきなり敬語になった王泉くんは、今、あたしに……告白した?


少しだけ赤らんでいる王泉くんの顔を見て、ようやく理解できた。

あぁ、あたし、告白されたんだ。


冗談か罰ゲームか、そんなことも思ったけど、違うとすぐわかった。


王泉くんは、そんな嘘の告白なんて絶対にしない。

まだ学級委員を一緒にやって5ヶ月しか経っていないけど、わかるんだ。


王泉くんは、真っ直ぐな人だから。