──ピンポーン。
比較的新しめの家。
表札にはゴシック体で書かれた『國岡』の二文字。
「はぁい。今あけまぁす」
機械越しに聞こえる声は、あの頃と何一つ変わってない。
少し鼻にかかった甘い声。
間延びした話し方。
「あ、りっくんじゃーん!久しぶり、来てくれたんだね」
「うん。披露宴には行けないから、今のうちに顔見とこうと思って」
「えへへ、ありがと。上がって。誰もいないけど」
二人きり…か。けっこうきついな。
「お邪魔します」
通されたのはリビング。
カップも、お箸も、弁当箱も、椅子も、全て二つあった。
極めつけはテーブルの上。一番見たくないものが置いてある。



