「そ、空くん……」



大石くんは有栖川さんの手首をぐっと掴んで、冷ややかな笑みを浮かべていた。



「何してんの、って聞いてるんだけど」



「ち、違うんだよ?あたしはただ……」



「有栖川、吉野さんを傷付けたら許さないからな」



彼が強く睨むと、有栖川さんは苦虫を噛み潰したような表情をして出て行った。



ほっ、と安堵の息をついた次の瞬間……



「吉野さん‼︎怪我してない⁉︎」



大石くんは強く私を抱きしめた。



「あ、あああの大石くん⁉︎だ、大丈夫だから……」



男の人に抱きしめられた事なんて無かったから、私は不覚にもドキドキしてしまった。



「……った……」



「え?お、大石く……」



「……良かった……無事で……」



ドキッ……



今まであんなにふざけてたのに……こんな大石くん、初めて……