「行ってらっしゃいませ、桜お嬢様」



学校に着きバンッと車のドアを閉めると、校門前にいた生徒たちが一斉にこちらを見た。



まあ、しょうがないよね。



お母さんはなんかの療法で手術を成功させたとかいって、テレビ・雑誌・新聞など医療に関するいろいろな仕事をしている。



だから家事全般と毎日の私の学校への送り迎えを執事やメイドに任せている。


いくらレベルの高い高校だからと言って、場違いな高級車が校門に止まったら皆気になるのは仕方がないと思う。



周りの視線が怖くて早足で下駄箱に向かい、ある物に気付くと私は重い溜め息を漏らした。



そこには、一通の手紙と酷く汚れた上履き。



『尻軽なお嬢様は死ね』



またか……こんな感じの手紙は毎朝見ていたから、もう習慣のようになっている。



一つため息をついて、クシャクシャッと丸めた紙を鞄の中に押し込んだ。