「おはようございます、お母さん」


「おはよう桜。聞いたわよ、この間のスピーチコンテストで優勝したらしいじゃない」


私の通う高校は全学年対抗のスピーチコンテストがあって、私は1年生で優勝という快挙を果たした。


「・・・まあ、私の娘なら当然のことね」


彼女の笑みから温度が消えた。


お母さんは私を絶対に褒めない。


成績が優秀なのも、先生に気に入られているのも全て当たり前だと思っている。


その過程で私がどんなに努力したかなんて、興味ない。


「はい・・・これからも頑張ります」


「そうしてちょうだい」


ピシャリ、と言い放ったかと思うとお母さんは出て行った。


「桜さん」


話を聞いていたらしい最上さんが、ぽんと肩に手を乗せた。


「先生はあなたが立派な外科医になられ、後をお継ぎになる事を望んでいらっしゃいます」


彼の言いたい事が薄々と見えた。


「ありがとうございます、お母さんがお待ちですよ?」


そう促すと、最上さんは一礼して部屋を後にした。