そして、桃矢が控え室に連れて行かれてから数分。
まだかなーと、思っている間に隣の控え室が騒がしくなってきていて。
「きゃああああ!」
と、女子の悲鳴という名の黄色い声に驚いて、作業する手を止めた。
な、なに……?
騒がしい声に紛れて、カツン、カツン、とリズム良く足音が鳴る。
ふと顔を上げたら、足音はわたしの前で止まっていた。
白いマントがパタパタと揺らめいて一瞬の呼吸を奪われる。
「と、桃矢……?」
今の言葉が正解なのか自分でも疑ってしまうほど、振り絞るように出した声はとても細くて震えていた。
わたしの目の前に現れた彼は、マンガの世界から飛び出してきた王子様にしか見えなかったから。



