───ビクッ!









「っ……善様…!?」

「ククッ…綺麗についたな。」









善はそう言うと
椿の首から顔を離し

上機嫌に笑みを浮かべた。






そっと跡のついた場所を
手でなぞる──。




椿は善のその仕草にすら

ゾクゾクするものを感じた。









「……何が不満だ。
不自由なく暮らせるだけの余裕はあるだろ。」

「で…でもそれは
全部善様のもので…。」

「どうせ俺1人じゃ使い切れねェさ。」









だからお前は
何も心配することねェんだよ、椿。






そう言う善が
腕の力を強める。




椿は善の言葉に
優しさを感じつつも

やはりどこか納得いかない様子だった。






そんな椿の様子を察して

善は少し悩ましげに片眉を上げて
椿に声をかける。









「……じゃあ、俺がお前に
使うってことなら文句ねェのか?」

「…え?」

「俺の意思で財産を使うんだ。
それなら問題ねェんじゃねぇのか。」









どうだ。





と、椿に尋ねれば

椿はそれに困ったように
眉を下げて笑う。









「どうしてそんなに、私が働くことに反対なんですか?」

「………そりゃあ、
お前に無駄な苦労させたくねェからだろ。」

「私が自らしたいと言ってるのに?」









椿が少し強く主張すると

善は少し驚いたように
彼女を見る。




今まで
こんな風に言い合うような状況になったことがないためか

善はこの時の椿の言動に

少し戸惑う。