企画部から戻って来て、自席に座れば、目の前に高く積み上げられた書類にげんなりする。
営業ではいかにその商品を売り込めるか?が一番のポイントになるのだが、プレゼンで用意しなければならない資料や書類は全てアシスタントの私の仕事。
平川さんが作ったプレゼン用紙を元に必要な物を用意し集めていく。


「いっつもすまんな。こないようさん押し付けるつもりはなかってんけど、どうしても今度のプレゼンは三課には負けたないねん。」

どうやら今回のこの商品の売り込みは二課と三課が合同でウチの一課との勝負が掛かっているらしい。
もちろん私は一課の平川さんのアシスタントなのだから、平川さんのプレゼンが通れば良いと願っている。


「構いませんよ。これが私の仕事ですし。」


『仕事』を強調させて言うのも、平川さんに対しての防御壁。
あなたのためにしてるのではない、とさりげなく含ませる。


「けど、このままやと、明日も明後日も出勤になるんちゃうか?」
「大丈夫です。週末、特に予定もありませんし、必ず、月曜日までには仕上げておきますので。」


特に気にせず、週末の予定を口にした。言ってから後悔したが後の祭り。
週末、予定がない・・・・・
なんて淋しい女なんだろうと思われただろうか?


「そうか、ほな、頼んどくわな。」
「はい。」


平川さんはそう言い残し、自席へと戻った。


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七瀬が俺の下で働くようになって1年。
ええ仕事しよる。
俺があれこれ言わんでも、必要なもん揃えて、きっちり期限までに仕上げて来る。
そら、仕事として当たり前なんかも知れんけど、それが俺のためやって思いたい俺がおる。
俺の周りに群がって来る他の女とちょっと違ごて、一切俺には媚も売ってこうへんし、色目も使わへん。
俺に全く興味がないっちゅうことか?はたまた、彼女の計算か?
一向に縮まる気配のない距離に正直イラついてる。
三課の修兵が彼女を狙ってるんも知ってるから。