二人の穏やかな日常


今日はちゃんとした服を着て髭も剃ってある。
やっぱりちゃんとした格好してた方が良いなあ。


「こんにちは」
「こんにちは!」


柔らかい笑顔で挨拶されて私は何故か慌てたように挨拶を返した。

何故慌てたかは分からない。


「あー、隣の……」
「斎藤です。こんにちは」
「こんちは」


最初は名前を思い出せなかったらしい隆二も愛想の良い笑顔で斉藤さんに挨拶をする。


こいつ、私とかには生意気だけど誰にでもってわけじゃない。
要は、相手を見る、ずる賢いやつ。

愛想を振り撒いておいた方が良いだろうと判断した人に対しては、とことんニコニコする。

愛想を振り撒く必要がないと思い直したときの手のひら返しもひどいもんだけど。


「斎藤さんもジュース買いに来たんですか?」
「いえ僕は煙草を」
「へー」


煙草吸うんだ……。
なんとなく、意外。


「飲み物は大抵お茶、水、コーヒー、お酒です。あ、あとココアと」


言いながら、一つ隣の自販機で煙草を買う斉藤さん。
あ、うちのお父さんと同じやつだ。


「へえ、ポテチは大量に食べるのに。ポテチには炭酸じゃないですか?」
「炭酸は苦手で」
「なんで百合そんなん知ってんだよ」


隆二の眉がぴくりと動いた。