その日の夕方。


 美月姫は最後の講義が終わるのを、今か今かと待ち構えていた。


 今日は金曜日。


 昼前で大学を終えた優雅が、午後の便で羽田を出発。


 夕方、新千歳空港に到着し、空港に直結したJR駅から列車に飛び乗り札幌に訪れる。


 今週末も美月姫に会いに来る。


 500マイル、約800キロ空路を飛び越えて。


 ……講義終了。


 隣の席の友人たちと一言二言挨拶を交わした後、美月姫は講義室を飛び出す。


 いつもはパーカーにジーンズという地味な服装なのに、この日は華やかな色合いの装束。


 それと講義が終わるのを待ち構えてそわそわしている態度で、美月姫がこれから「東京の彼氏」と待ち合わせしているのを察している人も多いようだ。


 美月姫は赤い太陽を背に、札幌駅へと急いだ。


 学内でばっちりメイクは目立つので、駅のトイレでお色直し。


 鏡に映った自分を再確認した後、トイレを出て、待ち合わせの改札口へと歩き出す。


 ちょうど帰宅ラッシュで、混み合う時間帯。


 しかも金曜日。


 繁華街目指して行き交う人たちも多い。