「……」


 そして家へと向かって歩き始めた。


 親はもう寝ていると思うけど、起きていたら言い訳しなくては。


 「偶然、女友達と出会って」とでも。


 美月姫は大きく深呼吸した。


 昨日の昼間、圭介の顔が見たくて母校へ向かった時とは、どれだけ世界は変わってしまったことだろう。


 圭介への慕情絶ち難く、切ない思いを抱いて母校の門をくぐった。


 会うと胸が痛かった。


 未練がいつまで続くのか、全く想像もつかなかった。


 それが桜の花吹雪の魔法か、突然の優雅との再会。


 そこから状況は一変した。


 封印したはずの想いが一斉に花開くかのように。


 誘われるがままにその手を取ってしまった。