四百年の誓い

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 「何も見えなくなるくらいに、お泣きになればいいのです。涙が尽きた頃に思い出してください。私が殿のおそばにいることを」


 「それは、」


 冬雅は都輝の言葉をすぐには理解できなかった。


 「縁あってこの蝦夷地に参りましてから、もう二十年になります。そしてこれからも、私は殿のそばにいる定めなのです」


 「……」


 京の名門公家出身で、年上の正室。


 そんな都輝子の口からこのような言葉を聞くのは、冬雅にははじめての体験だった。


 気位が高く、夫である冬雅ですら緊張を覚える存在。


 他人を癒す言葉など、用いることもなかった。


 だからこそ冬雅は、月光姫との時間に逃げ場所を求めたのかもしれない。


 そんな都輝が今、冬雅を安らげるような言葉を用いている。


 「お忘れになれなくとも構いません。私が殿の正室である事実は、生涯変わりません」


 ただそう告げるだけだった。