***
パキ……。
地面に落ちていた小枝を踏む音で、背後に誰かが近づいていることを冬雅は察した。
警備の厳しい、福山城下。
まさかこのような所にまで、曲者が入ってくるとは考えられないが。
(いや、曲者であろうとも構わぬ。私を楽にしてくれるのならば)
冬雅は未だに、悲しみだらけのこの世から立ち去ることを願うことがあった。
だが宗教上の理由で、自害は許されない。
それ以上に、自分が消えればこの福山の地は大変になることを十分に承知しているので、実際に死を選ぶ勇気もなかったが。
「誰だ」
冬雅は一言尋ねた。
「……」
背後に人の気配を確かに感じるのに、何も答えが返ってこない。
曲者か、亡霊か。
……亡霊でも構わなかった。
それが月光姫の亡霊であるならば。
もう一度姫に会えるのならば。
「何の用だ。名を名乗らぬか」
それでも名乗らない。
やがてその人物は、冬雅の横にまで近づいて来た。
「……都輝(つき)?」
冬雅はそこにいるのが自らの正室であることに、ようやく気がついた。
パキ……。
地面に落ちていた小枝を踏む音で、背後に誰かが近づいていることを冬雅は察した。
警備の厳しい、福山城下。
まさかこのような所にまで、曲者が入ってくるとは考えられないが。
(いや、曲者であろうとも構わぬ。私を楽にしてくれるのならば)
冬雅は未だに、悲しみだらけのこの世から立ち去ることを願うことがあった。
だが宗教上の理由で、自害は許されない。
それ以上に、自分が消えればこの福山の地は大変になることを十分に承知しているので、実際に死を選ぶ勇気もなかったが。
「誰だ」
冬雅は一言尋ねた。
「……」
背後に人の気配を確かに感じるのに、何も答えが返ってこない。
曲者か、亡霊か。
……亡霊でも構わなかった。
それが月光姫の亡霊であるならば。
もう一度姫に会えるのならば。
「何の用だ。名を名乗らぬか」
それでも名乗らない。
やがてその人物は、冬雅の横にまで近づいて来た。
「……都輝(つき)?」
冬雅はそこにいるのが自らの正室であることに、ようやく気がついた。



