四百年の誓い

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 「まことに、見事な桜だ」


 冬雅は誘われるかのように、庭園へと歩き出した。


 母が京の都より輿入れした際に、記念にこの地に植えられた桜の木。


 無事に根付き、見事な花を咲かせている。


 (まさにこの場所にて、私は月光姫と出会ってしまった)


 共に宴の喧騒を抜け出して、この桜の元へと逃れてきた際に出会った。


 花のはかなさを嘆く冬雅に対し、姫は満開の一瞬の華やかさを愛でていた。


 人により、受け取り方が異なる。


 それをきっかけに、冬雅は姫を愛し始めた。


 不当な手段で弟から奪い取っても構わないと思うほどに。


 そして失った。


 冬雅はこの春も、満開の桜を一人寂しく眺め続ける。


 咲き誇る花を以前に増して、むなしく感じるようになっていた。


 誰もいない。


 (私を許し、受け入れてくれるのは……)


 冬雅はむなしさを持て余していた。