本来ならば優雅だった、丸山乱雪の後継候補。


 それを水上が引き受けてくれた。


 丸山の遺産ともいうべき、地盤に残された強力な組織票により当選。


 丸山時代のような華やかさはないが、選挙区は安定した発展を見せている。


 「俺の代わりに大変な思いをしている人は多いけど、その人たちのおかげで俺は、好きなことをして生きられる」


 優雅は腕を伸ばし、深呼吸をした。


 そして美月姫をそっと抱いた。


 「美月姫とは、幸せにならなくちゃいけないんだ」


 「どうして改めて、そんなことを?」


 「何回か変な夢を見ているうちに感じたんだけど、遠い昔俺たちは不幸な別れ方をしたような気がするんだ」


 「……」


 美月姫も、同じような夢を数多く体験していた。


 「今回は、その時と同じ悲しみを繰り返したくないし、今度こそ幸せに生きていきたい」


 「私も」


 美月姫は優雅の首に腕を回し、自ら唇を寄せた。


 強く重なる唇。


 「……あの時何もかも諦めてしまわないで、本当によかった」


 キスの合間に、優雅が口にした。