四百年の誓い

 ……。


 「ごめんね。美月姫にも気を遣わせて」


 「え?」


 二人は福山城に隣接した公園で、桜を見て回っていた。


 理由の知れない懐かしさと悲しさに包まれながら。


 低木の花に顔を近づけ、匂いを嗅ごうとした美月姫に、優雅はいきなり詫びたのだった。


 「さっき幹事長の話が耳に入ってきて、どう振る舞っていいものやら困惑したでしょ」


 「私はいいんだけど、優雅くんが」


 「俺の顔を見ただけで、幹事長との親子関係に気づく奴は、そんなにいないとは思うけど」


 確かに幹事長に隠し子がいる話は知られているけれど、優雅の顔を見ただけで幹事長の隠し子と見破られることはまずない。


 「でも昨日の今日だ。選挙区であるこの界隈には、かなりの衝撃を与えているからね」


 「丸山幹事長が政界を引退するなんて、実感が湧かない」


 そう言って美月姫は、空を見上げた。


 青い空に薄紅色の花が揺れている。


 「幹事長も、こんなに早く引退するつもりなど毛頭なかった。だけど昨年末、暴漢に刺されて重傷を負ったことにより、何もかもが狂い始めた」