四百年の誓い

 「あの時私が、もっと大人だったなら」


 冬悟は口にした。


 兄である冬雅が、姫を我がものにしようとした時。


 彼は冷静さを失い、赤江の企みに乗せられれてしまった。


 罠だとは見抜けず。


 結果、罪に手を染め破滅を引き寄せ、死へと向かって暴走し。


 姫を一人置き去りにしてしまった。


 「生まれ変わってまた巡り会おう」


 そう誓ったのに。


 (兄の後悔の念が強すぎて。京よりまかり越した高僧の念仏により、私の魂は薄墨の桜の木の根元に封印され)


 成仏できず、魂は四百年にもわたって桜の木に閉じ込められていた。


 すでに黄泉へと旅立って、幾度となく転生を繰り返していた月光姫とは、すれ違いを続けて。


 四百年目、「花里真姫(はなさと まき)」として生を受けた月光姫が偶然、落としたビール缶を追いかけて冬悟のそばに立った。


 その時、呪縛が解けた。


 冬悟の魂は桜の木から解き放たれ、再び月光姫の姿を求めさまよった。