四百年の誓い

 ……。


 「あれから四百年余り。長かった」


 優雅は横で穏かな表情で眠る美月姫を抱き寄せながら、そうつぶやいた。


 いや、今の彼は清水優雅ではなく、福山冬悟と言ったほうが正解かもしれない。


 冬悟の意識に支配されていた。


 ……満開の桜の夜に出会った、可憐な姫。


 一目で恋に落ちた。


 身分の低い側室から生まれた自分が、当主である年の離れた異母兄の後継者とみなされるだけでもありがたいこと。


 周囲に定められた道を歩むのみで、それ以外のことは何も望むまいと心に決めていた。


 だが……出会ってしまった。


 この姫の微笑を、自分だけのものにしたいと願った。


 はじめての気持ちだった。


 想いを貫くことは不可能ではない……はずだった。


 ところが。


 彼の異母兄で福山家の当主である冬雅も、同じように姫を愛し始めた。


 当主の命令は絶対であったこの時代、冬悟の抵抗などたやすく退けられた。


 すると焦った冬悟は、冬悟の側近・赤江の甘言にまんまと乗せられてしまい、それが命取りになった。


 自滅する形で、死を招き寄せてしまった。


 それは愛する月光姫との今生の別れを意味した。