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 ……。


 「えっ、朝鮮出兵?」


 「我が福山家も出陣することとなった。私は領国を離れられない兄の名代として出陣する」


 福山冬悟(ふくやま ふゆさと)の突然の言葉に、月姫(つきひめ)は驚いて顔を上げた。


 新緑が萌える雲ひとつない午後、冬悟の表情が翳る。


 「どうして海の向こうにまで、侵略をしに行かなければならないのですか?」


 先年。


 豊臣秀吉は小田原にこもる北条氏を攻めて降伏させて、全国統一を成し遂げたはず。


 (これでもう戦はなくなると思ったのに、なぜまた……)


 「もう日本は、全国統一が成された。新たな領土を確保して、臣下への褒美を確保しなければならないのだろうな」


 「冬悟さま朝鮮の地で、罪もない朝鮮の人々を斬らなくてはならないのですか?」


 月姫は冬悟を見つめた。


 冬悟には出陣してほしくない。


 命を危険にさらすことなど望まない。


 そして……罪もない人々を殺めるなど、やめてほしい。


 「姫、私は」


 「行かないで……!」


 月姫は冬悟にすがりついた。


 「天下や領地、そんなもの要りません。最小限の蓄えがあり、誰もが幸せに生きられる世の中、それだけで私は十分です」