四百年の誓い

 ……。


 「先生の昔の恋人の話、聞きたいです」


 美月姫がオーダーした飲みかけのグラスの氷が、カラン……と音を立てた。


 居酒屋の喧騒は、個室ゆえ妨げられている。


 美月姫の真剣なまなざしに、圭介は一瞬心が揺れる。


 今でも胸が痛い。


 会うたびに美しくなってゆく教え子は、ますます最愛の人の面影を宿している。


 触れられないのがつらい。


 前の世で犯した罪ゆえ、遂げられぬ愛であると悟り、自らの手で美月姫を解放して優雅の元へ送り届けたのに。


 「聞いても何の参考にもならないぞ」


 いつもは昔の話だと、笑ってごまかしやり過ごすのに。


 今日ばかりは真姫との思い出を、美月姫と共有したい気持ちになった。


 もちろん容貌が瓜二つということは、隠し通したまま。


 ……そんな気持ちになったのは、居酒屋の窓の外に静かに降り続く粉雪があまりに切なかったからかもしれない。