「どこからそんな物騒なものを」


 窮地に追いやられた優雅がやけになって、どこかから持ち出した日本刀で京を脅かしているだけかと思い。


 京は日本刀を払いのけようとしたが、


 「!」


 隙がない。


 少しでも逆らう素振りを見せたら、一瞬にして斬られてしまいそうなくらい。


 (違う。優雅とは別人だ)


 同時に京は、自らに刃を向けるこの若者が、優雅ではないことを悟った。


 よく似ているけど違う。


 見るとその姿は、先ほどまでの優雅とは異なり、和装に髪は髷を結っている。


 「お前は……誰だ」


 「私は、福山冬悟(ふくやま ふゆさと)」


 「え?」


 その時背後で、何やら爆発音がした。


 驚いて振り返ると、先ほどまで燃えていた蚊取り線香が爆発したようだ。


 超常現象のような出来事だが……再び前を向いた時、福山冬悟と名乗る和装の若者を、京はどこにも見つけることはできなかった。