四百年の誓い

 優雅は京にかなわない。


 幼い頃から幹事長の意向で、優雅は護身術などを習わされた。


 東京滞在中に道場に連れて行かれ、何度か京にお手合わせ願った。


 しかし全く歯が立たなかった。


 当時は九歳という年齢差もあり、仕方がないことと周囲も慰めてくれたものの。


 幼かった優雅に京は、絶対に越えることのできない高い壁のように映ったのだった。


 あれから十年以上が経過し、その後京とは稽古を共にしたことはないものの、かなう相手ではないことを優雅は悟っている。


 だが……。


 「どうした? 俺がこのままこいつをもらってもいいってことか」


 挑発するかのように、京は美月姫のブラウスの下に手を入れる。


 「やめろ!」


 決死の覚悟で、京を止めようと優雅が動き出した時だった。


 背後の蚊取り線香が、一段と激しく燃え上がった。


 炎はまさに天井に達する勢い。


 まるで火事が発生したかのようだった。


 間もなくリビングの天井にも設置されている火災警報器が、けたたましく鳴り響き始めた。


 さすがに京の表情にも動揺の色が見え始め、その隙に美月姫を救い出そうと優雅はベッドに近寄る。


 「……?」


 鳴り響く警報機の音に、美月姫の意識は急に引き戻される。


 「冬悟さまっ」


 それは美月姫の中に眠る、生まれる前の記憶。


 月光姫時代のものだった。