四百年の誓い

 「ど、どうしてあなたがここに」


 京の腕から逃れようともがきながら、美月姫は問いかけた。


 「婚約者の浮気現場に、乱入したとでも言ってほしいか?」


 浮気。


 予想外の言葉ではあるが、事実上京との婚約話を受け入れてしまっている以上、美月姫のやっていることは浮気とも定義できる。


 「ま、お前が何をしようと、個人的な嫉妬に狂って現場に乱入しようなんて気持ちは、俺には1ミクロンも存在しないが。ただ幹事長の顔に泥を塗る奴には、それなりの制裁を加えなくてはならないのでね」


 「制裁……」


 「お前は俺というより、幹事長を裏切って、優雅を連れて逃げようとした」


 「いえ、確かに一瞬はそんな気持ちにもなりましたが……。やっぱりまずいと思って、優雅くんが到着したら相談しようと」


 「でも企んでここに呼び出したのは、事実だろう」


 「……」


 「一度は駆け落ちを目論んだが、土壇場になって怖気づいたか」


 「だから、優雅くんの将来を考えて、これからのことを相談しようと、」


 そこまで言い返して、美月姫は肝心なことを聞き忘れていることに気がついた。


 「優雅くんは!? 京さんはいったいどうやって、優雅くんより先回りができたんですか?」


 「優雅か」


 京はくすくす笑った後で、こう答えた。


 「今頃津軽海峡の、雲の上だよ」