四百年の誓い

 「……」


 その日の夕方、美月姫は行くあてもなく近所の公園脇の並木道を歩いていた。


 圭介に会いに行こうかとも考えた。


 苦しい胸の内を相談したいと。


 だが、圭介が学校に滞在しているかも分からないし。


 かつて「抱いてください」とまで懇願した相手に、今の恋の相談をするのも少し恥じらいを覚えるし。


 迷っているうちに母校に出向くタイミングを逸し、ただ時間の過ぎ行くままに夏の夕暮れの風に吹かれていた。


 と、その時。


 「お嬢さん。これからお茶でもいかがですか」


 背後から急に声を掛けられた。


 ナンパにしては少々丁寧な口調で。


 「!」


 振り向くとそこには、車が。


 見覚えのある最高級の黒いベンツ。


 車のナンバーも一緒。


 助手席のスモーク張りの窓がゆっくりと開き、そこに顔を見せたのは。


 (丸山幹事長だ)


 美月姫は息を飲んだ。


 今まで優雅のことを思い出しながら甘い夢に浸っていたのに、それらが全て吹き飛んでしまいそう。