四百年の誓い

 「全く予想もしてなかったから、今まであえて聞くこともなかったのだけど」


 「……」


 「美月姫には好きな人、ていうか付き合っている人はいるの?」


 その質問には答えられなかった。


 美月姫には優雅という、この世で唯一の存在がある。


 にもかかわらず、両親にすら打ち明けていない。


 優雅個人に関しては、両親も歓迎してくれるとは思うのだけれど。


 その背後にあるものを、両親が知った時。


 娘の幸せを願うためにも、きっと両親は自分と優雅のことを反対する。


 「優雅の結婚まで限定の、遊び相手」


 権力者の隠し子にもてあそばれているに過ぎないと、第三者はみなすだろう。


 そんなことを両親が知った日には、たとえ丸山乱雪の指示であろうと激高するだろう。


 美月姫はそう確信して、優雅との交際はひた隠しにしていた。


 幸いにして実家から離れて大学に通っているため、両親も娘の変化にはまだ気がついていない様子。


 「そんな人、いないよ」


 無理矢理お見合いの席に引っ張り出される危険性と、優雅の存在を打ち明けることにより引き起こされるトラブル。


 その二つの問題を天秤にかけた結果、苦渋の決断で美月姫は母親に嘘をついた。