(嘘でしょ……)


 ベンツはたちまち美月姫に追いつき、先回りをした。


 ここまでされると身の危険を感じ、今来た道を走って逃げ始めた。


 するとベンツも後を追い……。


 美月姫の退路を塞ぐような形で停車した。


 車と電柱の間に挟まれる形となる。


 「なっ、何なの? 警察を呼びますよ!」


 怖かったが必死で強がり、鞄のポケットから携帯電話を取り出し、110番通報しようとした。


 その時、ベンツの助手席のドアが開いた。


 「!」


 ボブサップによく似た、身長二メートル近い巨大な黒人が姿を現した。


 (何なの、この人たち……)


 美月姫は何が何だか分からず、ボブサップ似の黒人の様子を窺っていた。


 彼は車から降りると後部座席のドアを開けた。


 スーツ姿の紳士が、そこから姿を現した。


 「久し振りだね、お嬢さん」


 紳士が美月姫に挨拶をした。


 (誰……?)


 サングラスをかけた紳士だ。


 5~60歳と推測される。


 年齢の割には背が高い。


 美月姫が凝視していると、紳士はサングラスを外した。


 「丸山……幹事長!」