ところが、寄り道した薬局で思わぬ人と出会った。
それは、カフェ店員の貝山くんだった。
「あ、広瀬さん……」
彼は私の姿を見て、目を大きく見開いて驚いていた。
お互いに仕事帰りに会うのは初めてだった。
貝山くんはカフェの制服ではなくパーカーにジーンズといったラフな服装で、いかにも大学生といった若い雰囲気を醸し出している。
「貝山くんだ〜。制服着てないと分からないもんだね」
薬局の市販薬売り場で足を止め、彼に笑いかける。貝山くんもすぐに笑ってくれた。
「まさかここで会えるなんて思ってもみなかったです。……あの、デートですか?」
チラリと貝山くんの視線が私の斜め後ろに移る。
そりゃそうだ。
くっつきはしないものの私の半歩後ろについて回る男がいれば、何者かと聞きたくなるのが普通だ。
「あぁ、違うの。この人は……」
ボディーガードって言うのはまずいし、ここはひとつ友達ということで……と口を開きかけたのが、真山の言葉によって遮られた。
「どうも、椿の恋人の真山です」
「………………………………は?」
一瞬何を言われたのか理解出来ず、ヤツの顔を見上げて聞き返す。
しかし彼は一切私の方など見ることなく、にっこり笑って貝山くんにペコリと頭を下げていた。



