ボディーガードにモノ申す!



息苦しい満員電車も徐々に緩やかに乗客が降りていき、私が降りる駅の辺りではだいぶ収まっていた。


いつもの駅で降りて、私のペースで家まで歩く。


その時、普段警護中は一切話しかけてくることのない真山が珍しく口を開いた。


「不審者に襲われたのは一度だけですか?」


ただなんとなく疑問に思ったから聞いていたのかもしれないけれど、それまで彼は私のことになんてほとんど興味を示してこなかったので僅かに驚いた。


「一度だけです。……そういえば無言電話もあったけど、あれは違うのかな」

「無言電話?」

「それも一度だけ、夜に。何かの間違い電話かと思ったんですけど」

「心当たりはあるんですか?」

「全然。私のことを好いてる感じの人もいないし、連絡を取り合ってる人も特にいないし……」


真山の質問に答えながら、なんか虚しいなと自嘲気味に笑いそうになった。
どうだ、見てみなさいと言わんばかりの寂れたプライベート。


「例えば誰かの視線を感じたりとか、そういうこともなかったんですか?」

「…………視線かぁ。そう言われると感じたこともあったような気がしますけど」


改めて尋ねられるといまいち自信を持って答えられなくて、ついつい曖昧になってしまう。
彼はぼんやりとした私の回答を黙って聞いていた。