「広瀬さん、お待ちしてました」
早番の仕事を終えてお店の外へ出ると、真山がいつものスーツ姿で私を出迎えてくれた。
昨日のラフな私服とは一転して、しっかりネクタイもしているし会社帰りのサラリーマン風だ。
「きょ、今日もよろしくお願いします」
部屋に上がり込んで言いたい放題だった昨日の彼を思い出したけれど、例のごとく今の彼とはなかなか一致しないほど完璧に仕事用の顔になっている。
思わずこっちの返事が挙動不審になるものの、彼は気にしない様子で「行きましょうか」と私を促した。
仕事中の彼は、私に対して他人行儀だ。
言葉遣いもそうだし、優しげな表情もそうだし、態度もそう。
昨日みたいなフランクな話し方は絶対にしない。
そしてなによりも、彼が愛してやまない甘い食べ物にも見向きしない。
「仕事中に甘いものを摂取したくなったりしないんですか?」
デパ地下を通りながら半歩後ろを歩く真山に尋ねてみると、彼は朗らかな笑顔で首を振った。
「そういうのは仕事が終わってからと決めているので、全然平気です」
「そうですか」
本当なのか疑わしく思いつつ、私は焼肉弁当とデザートに焼きたてワッフルを購入した。
真山がチラリとワッフルの入った袋を見たのを、もちろん見逃さなかった。
食べたそうだな、とちょっと可哀想になる。



