ボディーガードにモノ申す!



「広瀬、入口のボディを総替えして。上からベージュのストローハット、インナーはオレンジのタンク、トップスは昨日入荷した袖シフォンのAラインのブラウス、ボトムはデニムのテーパード、裾は2回まくること。靴はサンダル適当に選んでおいて」

「分かりました!アクセサリーとバッグはどうしますか?」

「休日のOLってことで、広瀬に一任する」


テキパキと私に指示を出した橋浦さんは、デレデレとニヤけている佳織ちゃんの方を向くと大きなダンボール箱を2つ指差す。


「元木はさっき届いたコレを荷解きして、1点ずつ取ったらあとは全部ストックルームに入れてくれるかな?」

「はーいっ!了解でーす!」


キンキン響く声で返事をした佳織ちゃんは、苦笑いしている橋浦さんには気づかずに作業に取り掛かっていた。


小さなセレクトショップなので、従業員は3人しかいない。
平日は基本的に2人体制で、土日祝日などの混みそうな日は3人体制を取る。
お客様はリピーターが多いので、1人あたりの客単価も高めなのがうちのお店の特徴だったりする。


仕事でもプライベートでも使い回しがきき、シンプルな中にもちょっとした工夫がされている洗練されたデザインの服がたくさん店内に並んでいる。
ファストファッションが大流行しているけれど、そうではないものを求めている人も意外に多くて。
そういう人たちがうちのお店に来てくれるのだ。


アパレル関係の仕事に就きたくて、就職活動に励んだ大学時代。
その時にたまたまオーナーの馬場さんに出会い、ここで仕事をさせてもらえることになったけれど。
仕事に関しては本当に毎日楽しくやっていて、働きやすい環境を提供してくれて、馬場さんにも橋浦さんにも感謝している。
後輩の佳織ちゃんも、なかなか面白いキャラだし。


やりたかった仕事をやれて、私は生き生きしている…………と、自分では思っているのだ。