ボディーガードにモノ申す!



玄関を入って右手にあるスイッチをつければ、パッと目に飛び込んでくるのは足元に広がる靴の山。
僅かな隙間に、今日履いていたベージュのパンプスを乱雑に脱ぎ捨てる。


リビング兼寝室の部屋は、服が散乱。
脱ぎっぱなしの服を踏んづけて歩き、キッチンへ。今朝シンクに放り投げたままのコップを水道で軽くすすいで水を汲んだ。
細かい泡がコップの中で綺麗な粒を作る。
水を飲みながら、くるりと体の向きを変えて部屋を見渡す。


うーん、我ながら…………部屋が汚い。


清恵が言うような、ホコリだらけの部屋ではない。
掃除は休みの日には必ずやっているし、洗濯だってあまり溜め込まないようにしている。
この床に散らばる畳まれていない服は、ほとんど洗濯済みのものなのだ。


整理整頓がちょっと、いやかなり苦手なだけ。
ぶっちゃけ、部屋を片付けるのが面倒くさい。
そんな時間があったらベッドでゴロゴロしたい。


毎度毎度、次の休日にはなるべく整理するようにしよう、と心に決めるのだ。
でもいざ休みとなると、そんな気が起きることも無くて。結局出かけたり、まったり部屋で過ごしているうちに片付けないままで1日を終えてしまう。


仕事ではお店の商品がシワになったり崩れていたりするだけでも、すぐさま綺麗に整えて畳み直したりするのに。
どうして家だとこうなのか自分でもよく分からない。
ただひとつ言えるのは、「この部屋に誰も来ることがない」というのが最大の理由だということだ。


思い起こせば、3年前まで彼氏がいた時には少なくとも出した服はきちんとしまっていたし、足の踏み場が無いなんてことは一度も無かった。
私のやる気スイッチの根底はそこにあるような気がした。


まぁ、今現在そういった相手もいないことだし、面倒だからこのままでいっか。
なんとかしなくちゃという気持ちよりも「面倒くさい」という気持ちが勝利し、ぴょんぴょんと床の隙間を見つけては部屋を移動し、最終的にベッドへダイブした。


━━━━━干物女・広瀬椿。ここに有り。