2時間の飲み放題付きレディースコースを堪能した私たちは、お店の外でバイバイした。
別れる間際まで、清恵は私を干物女呼ばわりして心配なのかお節介なのかよく分からない言葉を浴びせてきたけれど、ほとんど無視してやった。


春だからか新入社員歓迎会なんかをやっているグループが多くて、酔っ払って大声で歌ってる若い人たちや道端で寝てしまった人をすり抜けて帰路につく。


恋人と思しき男女が近くを歩いていて、何気なく彼らを眺めた。
指を絡ませ、身を寄せ合って楽しそうに笑いながら歩いていく姿。羨ましくないと言えば嘘になる……ような気もする。


確かに私にはここ3年ほど恋人と呼べるような人はいない。
でも、わざわざ自ら積極的に恋愛しようって気にならないだけで、いい人がいたらお付き合いしたいなぁくらいの小さな希望くらいはある。
私だって女ですから。


閉店後のファッションビルの暗くなったショーウィンドウが私を浮かび上がらせる。
派手でもないし、地味でもない。
性格は明るい方だと思うし、接客業という仕事上笑顔を作るのも得意だ。
女だらけの職場で、異性と出会うきっかけが無いというのは事実だ。そして仕事が忙しいというのも事実。


だけど━━━━━。


中身が残念、というのも事実。
干物女と呼ばれても仕方がないような生活をしているのも、事実…………なのだ。


電車に30分ほど揺られ、降りた駅から徒歩15分。
たどり着いた単身者用のアパート。
簡素な造りの1DK。
階段をのぼり、通路を歩き、鍵を出して部屋の扉を開けた。