ボディーガードにモノ申す!



細い路地を抜けて、広い道路に出た。
車も普通に走っているし、人も歩いている。
日常の風景が広がっていることに安堵し、走ったことで上がってしまった息を肩でしながらおそるおそる後ろを振り返った。


…………………………誰も、いない。


途端に力が抜けてその場に膝をついた。
手も足も震えて、うまく立てない。
自分の手足が自分のものじゃないみたいだった。


「お嬢さん、大丈夫かい?何かあったの?」


トイプードルを散歩させていたランニングウェアの中年の女性が、私の悲惨な格好を見て声をかけてくれた。
すぐに涙がこぼれた。


「だ、だ、だずげでぐだざいいいいいいいいい」


今まで生きてきた中で、道端で大声で泣いたのは今日が初めてだった。


裸足で、髪の毛もボサボサで、耳からは出血して、その血がトレンチコートを汚して。
身なりも何もあったもんじゃない。


声をかけてくれた女性は、すぐに110番通報をしてくれた。