ボディーガードにモノ申す!



「こんばんは、広瀬さん」


にっこり微笑む貝山くんは、アパートの外灯に照らされて不気味に見えた。
混乱する頭を整理しながら、彼と距離を取るためにゆっくりと後退する。


「ど、どうしてここに?」

「だって全然お店に来てくれないんですもん。俺のこと避けてるのかなって思ったからここで待ってました」

「待ってたって言われても……」

「仕事帰りはいつも誰かが付き添ってるし、さっきも声をかけようとしたら隣人の男がいたから行けなくて。やっと話せましたね」


出勤前に立ち寄るカフェで見る貝山くんとはだいぶ印象が違った。
爽やかなで可愛らしい人だと思っていたけれど、舐めるように見つめてくる視線がまとわりついて、どことなく不快に感じる。


「まさか……無言電話ってあなただったの?」


おそるおそる尋ねてみると、彼は動揺することもなくすんなりうなずいた。


「はい、そうです。広瀬さんの声が聞きたくて」

「…………番号どうやって知ったのよ」

「郵便ポストに入ってた携帯料金の明細を見ただけですよ」


当たり前のように彼は答えているが、どう考えてもそれは犯罪でしょと言いたくなる。
言われてみれば、先月の明細が届いてなかったような気もする。
特に気にも留めなかった自分を呪った。