ボディーガードにモノ申す!



いい調子だ、もう帰るだけ。
怖い場所も通らないし、すぐ横は車も通っている。


夜に1人で行動することが久しぶりだったので、開放感を感じなから夜風を浴びて気分も良かった。


そうだ、帰ってお風呂に入ったら久しぶりに録画しておいたドラマ『御徒町の恋人』を初回から見直そうかな。
明日は休みだし、ビールを飲んでおつまみを食べながら……。


うふふ、とにやけた顔を隠すこともなく歩き続け、無事にアパートに到着。


階段をのぼろうとしたところで、私は立ち止まった。


━━━━━気のせいか、視線を感じるような?


まさか、ね。


階段をのぼって部屋の前まで行けば安全も同然である。
念には念を、とぐるりと辺りを見回すものの誰もいない。


自意識過剰だったかなんて思いつつ、階段に足をかけた時。
階段の裏からスルリと人影が現れた。


「おかえりなさい」


静かに、でもハッキリと、その男の声は私の耳に届いた。
反射的に動きは止まり、心臓も跳ね上がる。


声の主を、私は知っていた。


「危ないから夜遅くに1人で歩かないで下さいね。心配でたまりませんでしたよ」


この時の私は、きっとホラー映画さながらの驚いた顔をしていたんじゃないかと思う。
ぽろりと口から彼の名前が漏れた。


「貝山くん……」