話しながらいつの間にかアパートに着いていることに気がついた。
薄暗い階段をのぼり、部屋の前で立ち止まって鍵を開ける。


ああいえばこう言うの繰り返しで、私は真山にイラついたように牙を剥いた。


「あーもう!いいの、オヤジで!自分でもオヤジくさいって思うもん、認めるから!」


なんでこんなくだらないことで口論しているのか分からず、たまらずに吹き出す。
同時に真山も笑い出していた。


「そんなの大声で豪語するなよ、バカだな」

「オヤジですから」


私は開き直り、ドアを開いてヤツの方を振り返って


「じゃ、そういうことで。今日はありがとうございました」


と言い捨てて、とっとと部屋に入ろうとしたら。
それを真山はドアをガシッと手で止め、するりと玄関へ入り込んできた。


まさか玄関まで入ってくると思っていなかったので、私は驚いて彼を見つめる。


「え、ちょっと、勝手に入ってこないでよ」

「教えてやろうか」

「はい?」


電気をつけていない暗くて狭い玄関で、真山の目がキラリと光った気がした。
パチンと瞬きをしたら、ぐっと彼の顔が近づいてきて。


真山の唇が私の唇のすぐ横に押し当てられた。