帰り道、仕事中ということを忘れたのか、それとも放棄したのか。
それは分からないけれど、真山は私の後ろじゃなくて隣を歩いている。
「貝山と杉田、それから職場の上司。あとは日頃関わってる男はいないか?」
彼からの問いかけに、私は皮肉まじりに横目でチラ見しながら腕組みをした。
「あのねぇ、毎日生活してたら会話する男性なんてごまんといるわよ。じゃあ何?スーパーの店員とか犬の散歩してるおじいちゃんとか、そういう人まで疑ってかかるの?」
「場合によっては」
「呆れた!そういうのはいいんだってば」
彼の親友の三上くんよりもよっぽど真山の方が警察官っぽい気がするのは気のせいではなさそうだ。
ただ、私の知り合いの中にそういう変質者じみたことをする人がいないでほしいという願いだけは確かにある。
「気にならないのか?自分を襲ってきた奴のこと」
素朴な疑問といったところだろうか、真山は不思議そうな顔をしていた。
やっぱり男と女では感覚が違うんだなぁと、この時実感した。
「気にならなくはないわよ。でも、それ以上に怖い。襲われた時も、無言電話を受けた時も、怖くて手が震えたもの。…………出来ればもうあんな思いはしたくない」
ポロリとこぼれてしまった本音。
あまりにも自然に打ち明けてしまったので、我に返った時にはごまかすように笑顔を作った。
「ま、どうせ真山さんのことだから、そんなの私らしくないとか言うんだろうけどね」



