ボディーガードにモノ申す!



「最近、椿が変質者に襲われまして。それで帰りは俺が送るようにしてるんです」


真山がサラッと普通に暴露してしまったので、私の方は気が気じゃなく。
ギョロッと目をひんむいてヤツに無言の訴えをしたけれど、掠ることなくスルーされてしまった。


そんな突然の話に杉田さんは戸惑って、オドオドしていた。


「へ、変質者ですか。それは恐ろしいですね、気をつけないといけないですね」

「えぇ。……あの、杉田さん。アパートの近くで不審者を見かけたりしてませんか」


さりげない真山の揺さぶりに、杉田さんはすっかり乗ってしまったようだ。
落ち着きのない表情で、私と真山を交互に見やって吹き出してきた汗をハンカチで拭っていた。


「す、すみません……。そういう人は、見かけたことはないです」

「そうですか。残念です」


真山はフッと含んだような笑みを浮かべ、さっき杉田さんがすすめてくれた雑誌を掲げた。


「じゃあ、これ。買います。教えてくださってありがとうございました。杉田さんも、夜道にはお気をつけ下さい」


ポカンと口を開けたままの私を、真山が引っ張り出す。
自動的に歩かされ、その中で後ろを振り返った。


杉田さんが落ち込んだような、切ないような。そんな顔で佇んでいるのが見えた━━━━━。