「あの人。メガネかけてる、真面目そうな……」
コソッと耳打ちするように真山に杉田さんを教えると彼は目を細めて確認し、すぐに歩き出した。
「話しかけよう」
「え!でも!」
「どんな奴か話さないと分からないしな」
私が止めるのも聞かずに真山はあっという間に杉田さんの元へ歩み寄り、黙々と作業する彼に近づいてあっさり声をかけた。
「ちょっとお尋ねしてもよろしいですか?」
「あ、はい。いらっしゃいませ」
杉田さんは雑誌を並べていた手を止めて、即座に立ち上がり真山の要望を聞くべくして微笑みを浮かべた。
「部屋の掃除だとか整理整頓だとか、そういうコツが載ってる本を探してるんですけど。オススメありませんか?」
勝手に私の汚部屋のことを心配しているのかバカにしているのか、真山はそんな本を杉田さんに案内するよう頼んだのだ。
杉田さんは私がいることには気づいていないようで、「ありますよ」と答えて案内してくれた。
部屋のインテリアなどのコーナーまで連れてきてもらい、杉田さんが手に取った雑誌を真山に手渡しする。
「これはけっこう売れ行きも好調ですから、参考になるかと思いますがどうでしょうか?」
「ありがとうございます」
真山は雑誌をパラパラめくりながら、何気なくつぶやいた。
「俺の彼女がなかなか整理とか掃除が出来ない子でして……、これを読んで代わりに片付けてあげようかなって」



