「いつも椿がお世話になってます」
「い、いえ!こっちの方がお世話になってます。毎朝、広瀬さんの笑顔に癒されてるんです」
「癒されてる……ねぇ」
答えた貝山くんの表情を舐めまわすように眺め、嫌味ったらしい笑みをチラつかせたあと元の営業スマイルに戻った。
「まぁ、職業柄笑顔を作るのは得意だもんな。なぁ、椿?」
この状況で椿と呼ばれてドキッとしている自分が情けないったら。
はぁ、と曖昧な返事をしてうなずくしかない。
「……す、素敵な彼氏さんですね。俺はお邪魔のようなので、帰ります。広瀬さん、またお店で」
「あ、うん……またね」
妙な気遣いをいただいてしまい、貝山くんはそそくさと薬局を出ていってしまった。
当然のことながら、私は真山に問い詰める。
「ねぇ、ちょっと変な嘘つかないでよ!どうしてあんなこと言ったの?」
付き合ってもいないのに恋人だとか、切なさが倍増するからやめてほしい。
そんな本音はもちろんひた隠す。
真山はというと、ちっとも悪びれる様子もなく肩をすくめて微笑んでいた。



