ボディーガードにモノ申す!



しかし私のそんな事情なんて佳織ちゃんは知らない。故に、ガンガン突っ込んでくる。


「も、もしかして彼氏と同棲してるとか!?」

「だから彼氏はいないんだってば〜……。本当にね、佳織ちゃんが思ってるよりも私ってオヤジなのよ。オヤジ女子なの。風呂上がりにビール一気飲みとかしてるんだから」

「嘘だっ!え、まさか裸で?」

「だって誰もいないんだもん」

「えぇ〜!ジェラピケの可愛いルームウェアとか着て、ラデュレのボディクリーム塗ってるイメージでしたぁ」


本気でショックを受けているらしく、充血した赤い目を丸くして口をあんぐりあけている後輩を見て、「なんじゃその妄想は」と呆れてしまった。


「そんなわけないでしょ?高校のジャージ着てスルメかキムチ食べてるわ」

「やだ〜!それ以上聞きたくない〜!」

「もっと言ってあげようか?うちには芋焼酎も常備してあって……」

「嘘嘘嘘!椿さんは寝る前にまつげ美容液を丁寧に塗って、ホットマスクして優雅に過ごしてるんだから〜!」

「アホか!寝る前なんてスマホで胸キュン漫画読んでニヤニヤしながら歯磨いて、ベッドに入ったら3秒で寝るわ」


私もいい感じに酔っているのか、今まであまり突っ込んで聞かれたことがなかったから話さなかっただけの私生活をバンバン口にした。
そのたびに身をよじって「やだやだ」「嘘嘘」を繰り返す佳織ちゃんをからかいたいという気持ちが強かったのかもしれない。
その証拠に彼女は楽しそうだ。


女2人で盛り上がっていたら、唐突に隣からあからさまに吹き出す声が聞こえた。


「ブハッ!……オヤジ女子っていうか、単なるオヤジじゃん」


ハッと我に返って、横目で隣を確認する。


隣のテーブルには、肘をついてこちらを伺うようにニヤついた笑みを浮かべている男と、もう1人困ったような表情をしている男がいた。
2人ともスーツ姿だ。
会社帰りのサラリーマンといったところだろうか。